≪株式会社デンソー技研センターの見学記録≫
0.はじめに
技術教育学講義ならびに演習の授業の一貫で、株式会社デンソー技研センターを見学させていただきました。
お忙しい中、ご説明、ご案内くださった職員の方々に厚く御礼申し上げます。
1.見学について
日時:平成22年1月15日 2:00~4:30
場所:株式会社デンソー技研センター本社
デンソー高棚製作所(愛知県安城市高棚町)
内容:スライドによる説明 → 施設内案内 → 質疑応答
2.スライドによる説明
(1)株式会社デンソー技研センターに関して
デンソーが100%出資した、技術、技能の研修の場。
(2)デンソー工業技術短期大学校
・厚生労働省認定の企業内短期大学校。
・学校法人ではなく、短大修了はデンソーの中でのみ通用する。
・「学科・実技・心身」すべての訓練を目指している。
工業高校課程(中学卒三ヶ年教育) 高度熟練技能者を育成する。
高等専門課程(高校卒一ヶ年教育) 多能的技術・技能を有した高度技能者を育成する。
短大課程 (高校卒二ヶ年教育) 創造性豊かな実践的技術者を育成する。
技能開発課程 技能五輪大会へ向けた訓練を行い、高度熟練技能者を育成する。
(3)研修
○基礎技能研修
ねらい:基本的な技能と社会性を持った技能者を育成。
内容:品質管理、製図 、測定、空気圧 、働く心構え、規律訓練
○オペレーター研修(中級、上級、TOP級)
○階層別研修(指導技法、デンソーにおける仕事の教え方、管理職系、専任職系)
○高度技能研修
技術変化に対応し、生産設備の製作・保全、製品開発・試作を担うハイテク技能者を育成。
電子系・情報系・ロボット制御系・機械設備系・機械加工系・試験実験系・型加工系
(4)評価制度
○検定
・技術検定
職種ごとに業務遂行に必要な技術レベルに到達しているかを検定。
基礎+専門技術(10職種)
・技能検定
モノづくりに必要な知識・技能を、職種ごとに学科と実技試験で検定。
社内技能検定1・2級(31職種) 国家技能検定1・2級(23職種)、特級(17職種)
○専門技能試験
現場技能の高度化を推進するリーダーの技能を評価。(38種目)
○社内技能競技会
技能の顕彰とレベルアップを図る。
上級 (11種目) 初級(5種目)
3.施設見学
・一人一台機械があり、設備が充実している。
・研修内容によって場所が分けられており、各セクションに指導員がいる。
・精密な部品作りを訓練でき、材料が整っている。一方で、車全体の展示、検証が行われているセクションもある。
・挨拶、マナーがしっかりしている。
*説明を受けた場所
4.質疑応答
Q1:地元出身者の割合はどのくらいですか?
A1:ほとんどが地元出身者で、親や親戚の勧めで入学する人が多いです。
Q2:なぜ検定を奨励しているのですか?
A2:関所をもうけていないと、技術の向上は難しいからです。
また、検定や技能五輪は到達点ではなく、高度な技術を身につけることを目指しています。
Q3:なぜ独自の検定があるのですか?
A3: 国家検定にない検定を独自に設けることで、誰もが公平、公正に評価されるような体制を整えています。例えばスピードメーターの検定は国家検定にはありません。
Q4:教師はどういった方がするのですか?どのような基準で選ばれるのですか?
A4:卒業生で現場経験のある人から、人間性を重視して判断します。
教師を続ける人や、3年で変わる人など様々です。教師を続ける人には、教育現場の核を担ってもらっています。
Q5:外国から来た生徒には特別な授業はあるのですか?
A5:日本語指導の教室はありませんが、英語で指導できる指導員がいます。
海外指導は英語か日本語です。また、障害のある人には手話での指導があります。
Q6:教育を受けた後、デンソー以外の会社に行くことはありますか?
A6:ありません。入学=入社という形になります。その代り、将来はデンソーで働くことが保障されています。
Q7:教材はどういうものですか?
A7:市販の教材を使うこともありますが、基本的には独自のものを作っています。
Q8:座学と実習の割合はどのくらいですか?
A8:基本的には、座学対実習=3対7です。しかし、1年生は座学、心身育成中心、学年が上がっていくにつれて実習の割合が増えるというように、学年によって変わります。
Q9:教育を行う上で大切にしていることは何ですか。
A9:「学科、実技、心身」全ての向上を目指しており、心身面では、マナーの指導を徹底し、会社の敷地に入る際には一礼させるなど、職業人としてのマナーも重視しています。
Q10:働きながら学ぶことができるということですが、お給料はあるのですか?
A10:給料ではなく、訓練生としての手当という形になります。従って、同じ年齢でも、一般社員と訓練生では金額が違います。基本は、一般の7~8割となっています。
Q11:関係企業のもつ教育機関との関わりはありますか?
A11:トヨタグループの中でスポーツ大会が行われるなど、交流の場はあります。
Q12:入学の際の試験科目はなんですか?重視している科目はありますか?
A12:科目は中学校で履修した数学、国語、英語、そして実技があります。 特に重視している科目はありません。すべてを総合的に判断します。 また、実技は、手先の器用さを見るもので、専門的な技術を見るわけではありません。
5.おわりに
研修設備もさることながら、一般への展示、説明の体制も整っており、大変勉強になりました。スライドによる説明の後、実際に見学するということ、まさに座学と実践だと思います。
株式会社デンソー技研センターの職員の皆様、お忙しい中、ありがとうございました。
【 執筆 : 教育学部3年生 】